2019-11-19 UPDATE
私が主任指導員(当時)として着任した施設の出来事です。
定員50名の特別養護老人ホームの入居面接が進み、3ヵ月の時間をかけて50番目の入居者を迎え入れることができました。
その50番目の女性は、息子さんと二人暮らしでした。女性は長く寝たきり状態で、息子さんも仕事の為日中は一人で過ごされていました。
その頃、地域にはデイサービスセンターが1か所あるのみで在宅介護への支援体制もほとんどありませんでした。
女性は何年もの間、お風呂にも入れず決して衛生的な状態とは言えませんでした。息子さんも母親に十分な介護ができないことを悩んでおり、近隣の特養に入居できることを大変喜んでいただきました。
入居当日、女性の受入れをした際、長く入浴が出来ていなかった事実を聞いた医師・看護スタッフ・介護スタッフが、特浴槽で気持ちよく入浴してもらおうと入浴介助を行ってくれました。私はその時、別の利用者さんの入院面会で施設を離れていました。
病院のスタッフから急ぎの電話が入っているとの連絡を受け、その女性が入浴介助中に意識を無くしそのまま亡くなったとの内容の連絡でした。
何が起きたのか理解もできず施設へ戻り、事の顛末の報告を受けました。最後の最後にとんでもないことをしてしまったと、息子さんや福祉事務所の担当者にどの面下げて会えばよいのか、言葉では言えない感情が渦巻き涙が押さえられませんでした。
亡くなった女性に化粧をし綺麗に身支度をして息子さんをお待ちしました。
息子さんは、「せっかく施設に入れたのに・・」とおっしゃった後、「亡くなったことは悲しいですが、最後にこんなに綺麗にお化粧した母親と会えるなんて想像していなかった。お風呂もはいれたんやな。よかったな。ありがとうございます。」と私に頭を下げて泣かれました。
今から26年前、辛い出来事でスタートした主任指導員の仕事ですが、利用者と家族に誠実に向き合うことがどれだけ大切かを改めて教えられた出来事でした。この思いは、立場を変えても私の中では変わりのない教えとなっています。